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国際税務とは? ~主要6領域の仕事内容と求められるスキル~

小学校から英語教育が行われ、AIによる翻訳やコミュニケーション支援も急速に発展する中、国境を越えたビジネスはこれまで以上に身近なものになっています。その中で、語学力と税務の専門性を活かせる「国際税務」に興味を持つ方も増えています。

そこで本記事では、「国際税務とはどのような仕事なのか」という基本的な疑問から、各領域の仕事内容や求められるスキルまで、国際税務に興味を持つ方や、専門性を高めてキャリアアップしたい方に向けて解説します。

国際税務の種類

国際税務と一口に言っても、その領域はかなり広範にわたります。

本項目では、国際税務の中でも、転職市場で目にすることの多い業務を大きく6つの領域に分けて、それぞれの仕事内容を紹介します。

※なお、実際の部門名や業務区分は法人によって異なります。

【インバウンド税務】

インバウンド税務とは「日本に進出する海外企業の税務(会計)支援」を指します。

税法や会計制度は国によって大きく異なるため、税法に関する難解な業界用語をクライアントが理解できる形で説明できるスキルが求められます。

一方で、日本国内で行う業務については、日本の税法や会計基準がベースとなります。また、案件によっては他国との連携が比較的少なく、Big4のような国際会計ファーム以外の会計事務所や税理士法人でも対応していることから、国際税務未経験者にとっても比較的入っていきやすい領域です。

特に欧米企業をはじめとする外資系企業では、バックオフィス業務を外部へ委託するケースが多く、他国に進出する際はまずは営業や事業開発、経営企画などのフロント部門を優先して整備し、経理・人事など一般的にコストセンターと位置付けられやすい管理部門については外注するという流れが主流です。

そのため、記帳や決算などの会計面から、税務申告、その他税務アドバイザリーまでを一貫して請け負うケースが多い点も特徴です。

また、日本法人を設立するのか、支店や駐在員事務所にするのかといった進出形態の検討や、グループ内の資金移動、後述する移転価格税制、関税・間接税、グローバルモビリティなどの領域とも密接に関わります。

【アウトバウンド税務】

アウトバウンド税務はインバウンドとは逆に「日本企業が海外に進出する支援」を指します。

インバウンドと同じく、各国の税制の違いがポイントになりますが、日本の税法知識だけではなく、現地の税制や商習慣への理解に加え、各国の専門家と連携して業務を進める力が重要になります。

そのため、Big4をはじめ、海外拠点や各国の専門家と連携しやすい国際会計ファームが中心となって業務提供を行うケースが多い領域です。

具体的には、海外進出支援に加え、外国子会社合算税制(CFC税制)や外国税額控除への対応、海外子会社から日本への資金還流、クロスボーダーM&A、海外子会社の組織再編などを行います。また、移転価格や関税については専門チームと連携することも多く、場合によっては海外事業からの撤退支援まで行います。

クライアントは日本企業になるため、日本の税制についての知識も重要です。また、クライアントの要望を正確に把握するコミュニケーション能力や、その内容を進出国の現地担当者へ正確に伝える語学力も求められます。

【移転価格(Transfer Pricing)】

移転価格税制とは、一言でいうと「海外のグループ会社などとの取引を通じて、利益を不当に移転させないためのルール」です。

馴染みがない方には非常に分かりづらいため、ここではわかりやすいよう一つの例を示します。

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例:

日本の自動車会社が海外子会社へ部品であるネジを販売する場合、本来100円で販売すべきネジを50円で販売してしまうと、日本では利益が減り、海外で利益が増えることになります。

逆に200円で販売すれば、日本に利益を集めることもできます。

このように、グループ会社間では価格を自由に決められるため、税率の低い国へ利益を移転して税負担を軽減することも理論上、可能になってしまいます。

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そこで各国では、グループ会社間の取引であっても、第三者との取引と同じような適正価格(独立企業間価格)で取引することを求める移転価格税制が設けられています。

移転価格税制において、企業は海外のグループ会社などとの取引価格の妥当性を分析・文書化し、税務調査にも対応できるよう準備する必要があります。

具体的な業務内容としては以下の通りです。

・グループ会社間取引の内容や各社が担う機能・リスクの分析

・比較対象となる企業・取引のリサーチおよび独立企業間価格の算定

・移転価格文書の作成(取引価格の妥当性を説明する資料の作成)

・税務調査対応 など

移転価格領域では、各国の移転価格税制や税務当局の判断基準への理解に加え、クライアントの事業内容や業界構造、ビジネスモデルを理解する力も必要になります。

また、分析結果をクライアントや税務当局へ説明するスキルなど、一般的な税務申告業務とは異なる専門性が求められます。そのため、インバウンド・アウトバウンド業務とは切り離された専門領域として扱われることが多く、Big4を中心とした国際会計ファームでは、部門やチームが分かれています。

転職においては、海外との連携や英文資料を扱う機会が多いため、他の税務領域と比較して語学力が重視される傾向があります。一方、日本の税理士資格については、一般的な法人税務などと比べると、必須とされない求人も多く見られます。

【関税・間接税】

関税・間接税は、「国境を越えたモノやサービスの取引に関する税務」と捉えると分かりやすい領域です。

関税は、国境を越えたモノの輸出入に関わる税金であり、一般的には輸入国側で課されます。適用される税率や税額は、品目、原産地、輸入価格などによって異なります。継続的に輸出入を行う企業では、わずかな税率の違いでも全体の税負担に大きな影響を与える可能性があります。

具体的には、商品の品目分類、関税評価、原産地判定に加え、EPA(関税の削減・撤廃だけでなく、投資やサービス、人の移動なども含めた経済連携協定)やFTA(関税の削減・撤廃を中心とした自由貿易協定)を活用した関税負担の適正化などを行います。また、日本の消費税に相当するVAT(付加価値税)やGST(物品・サービス税)といった、各国の間接税への対応も重要な業務です。

海外グループ会社間の取引では、取引価格が関税評価や移転価格の双方に影響するため、他の国際税務領域と連携して検討することもあります。

関税・間接税領域では、各国の税制だけでなく、EPA・FTA、WTO協定、通関実務など、複数の制度や論点を横断的に理解する必要があることから、非常に専門性の高い領域といえます。

また、税法に関する知識に加え、物流や調達、サプライチェーン全体を理解し、企業の取引構造や事業体制を検討する、戦略コンサルティングに近い視点も求められます。

【グローバルモビリティ(駐在員・個人国際税務)】

グローバルモビリティは「国境を越えて働く人材に関する税務および人事・労務」に関する税務領域です。

具体的には主に海外駐在員(あるいは日本へ赴任する駐在員)の方や複数国を行き来する出張者といった複数国にまたがって働く方々の個人所得税対応がメインになります。

どの国で所得税が課されるかは、居住地、勤務地、滞在期間、給与の負担関係、各国の税法や租税条約などによって異なります。

そのため、居住者・非居住者の判定、複数国での所得税申告、外国税額控除による二重課税の調整、タックスイコライゼーション(国ごとの税負担の違いを会社と社員の間で調整する仕組み)などについて、専門的な知識が必要になります。

また、給与計算や社会保険も重要な論点となり、場合によってはグループ内外の行政書士法人などと連携し、就労ビザやイミグレーション、海外赴任制度や就業規則に関する支援を行うケースもあります。

特にBig4では、税理士法人だけでなく、併設するコンサルティング会社などと一体となって業務を行うこともあります。一般的にイメージされる税務申告業務とは異なり、「人材」に関するコンサルティングの要素が強い領域ともいえます。

【国際資産税】

国際資産税は上記のグローバルモビリティと同じく、個人に関する国際税務領域となりますが、主に「個人が保有する海外資産の移転・承継に関する税務」を扱う点が特徴です。

海外資産を保有する方や海外居住者の相続・贈与、海外不動産や有価証券などの売却、海外移住、国外転出時課税などに関する税務支援が主な対象になります。国内資産と海外資産を併せて保有しているクライアントも多いため、海外の税制だけでなく、日本の相続税、贈与税、所得税に関する知識や経験も必要です。

また、海外不動産、非上場株式、外国法人の持分など、評価が難しい財産を扱うこともあります。そのため、各資産をどのように評価するかという財産評価の知識も重要になります。

富裕層・超富裕層からの依頼も多く、金融機関や弁護士、現地の税務・会計専門家など、複数の関係者との連携が必要です。専門知識に加え、機密情報を慎重に扱う姿勢や、クライアントとの信頼関係を構築する高いコミュニケーション能力も求められます。

各領域において求められるスキルイメージ

※具体的な応募要件については各社によって異なります。

【インバウンド税務】

・日本の会計税務に関する知識

税理士試験科目では、簿記論、財務諸表論、法人税法などの知識があると評価されやすい領域です。一方で、ポジションによっては日商簿記2級や会計実務の経験から検討してもらえるケースも多々あります。

・英語への抵抗がないこと

会計・税務支援を中心とするポジションでは、入社時点から必ずしも高い語学力を求められず、英語に抵抗がない程度から受け入れてもらえるケースも多くあります。

一方で、職位が上がるにつれて、難解な日本の税制を海外クライアントが理解できるように説明する必要があるため、より高い語学力が求められます。

【アウトバウンド税務】

・クライアント理解・課題把握力

日本企業がメインクライアントとなるため、クライアントの事業内容や海外展開の目的、現状の課題、要望を正確に理解する力が必要になります。

・国際税務制度やM&A、組織再編といった専門知識

現地の税制については各国の専門家と連携することが多いため、すべての国の税制を日本の税制と同じレベルで理解している必要はありません。

一方で、外国子会社合算税制や外国税額控除など、日本側で定められている国際税務制度については理解しておく必要があります。また、案件によってはM&Aや組織再編に関する知見も求められます。

・高い語学力とコミュニケーション能力、現地商習慣についての知識

現地専門家と密に連携し、クライアントの要望を正確に伝える必要があることから、高い語学力とコミュニケーション能力が重要になります。また現地の商習慣などについて、一定の理解を求められることもあります。

【移転価格】

・高い語学力

海外拠点や現地専門家、税務当局などとコミュニケーションを取り、英文資料を収集・分析する機会が多いため、国際税務の中でも比較的語学力が重視される領域です。

・リサーチ・分析力

取引妥当性の証明のため、クライアントのグループ会社間の取引情報や類似するケースの価格算定など多岐にわたる情報収集、分析能力が求められます。

リサーチ・分析能力については戦略コンサルティングファームなどで得られるスキルですが、リサーチ経験を持つ方は非常に少ないため、若手採用の場合には論理的思考力や基礎的な分析力など、ポテンシャルが重視される傾向があります。

・資料作成能力

移転価格文書の作成や税務調査対応では、取引価格の妥当性を説明する資料を作成する機会が多くあります。そのため、日本語・英語を問わず、情報を整理し、論理的な資料にまとめる能力も重要です。

資料作成についても、入社時点で完成されたスキルを求めるのではなく、入社後の成長を前提に採用する傾向が強い項目です。

【関税・間接税】

・関税・間接税・EPA/FTA規則に関する知識

業務を行う上で基礎知識や関税・貿易に関する実務経験が評価されやすい領域です。

そのため通関士の資格を持つ方や、メーカー・商社などで貿易管理、通商、物流、調達などの業務に従事してきた方、税関出身者などの経験が活かしやすい領域です。

・高い語学力とコミュニケーション能力

関税関連法令を正確に理解し、クライアントに説明提案を行うことが必要になることから高い語学力とクライアントが理解できるようかみ砕いてわかりやすく説明するスキルが求められます。

・貿易実務に関する知識

貿易実務の流れが理解できていないと、リスク分析やクライアントへの提言が難しいため、輸出入や通関、物流などに関する実務理解も必要になります。

場合によっては、関税負担の適正化を目的として、調達先や製造工程、物流経路の見直しまで検討する大規模なプロジェクトに関わることもあります。そのため、税務だけでなく、企業の実際の事業活動を理解することが重要です。

【グローバルモビリティ】

・所得税の知識

個人の給与や報酬に関係する分野となるため、日本の所得税法、源泉徴収、租税条約、外国税額控除、居住者・非居住者の判定などについての理解が必要です。また、対象国の税制については、現地専門家と連携して確認・対応する力が求められます。

・給与・人事制度についての理解

給与計算、社会保険、海外赴任規程なども密接にかかわるため、人事労務の知識も重要となります。

・一定程度の語学力とコミュニケーション能力

クライアント企業の人事、海外拠点、赴任者本人など税務に詳しくない関係者とやり取りする機会が多いことから複数の関係者に対し、わかりやすく説明し、調整をしていくスキルが求められます。

語学力については求人によって差がありますが、メールや定型的な資料のやり取りを中心に、一定程度の英語力から経験を積めるポジションもあります。

【国際資産税】

・相続税、贈与税・所得税の知識および財産評価の知識

個人の財産が中心となるため、相続税、贈与税、所得税に関する知識が重要になります。また、事業承継が関係する場合には、法人税や非上場株式評価に関する知識も必要です。

海外不動産、非上場株式、外国法人の持分など、評価が難しい資産を扱うこともあるため、財産評価に関する知識があると大きな強みになります。

・富裕層への対応力

国際資産税では、富裕層・超富裕層のクライアントを担当するケースも多くあります。

専門知識だけでなく、機密保持を徹底する姿勢、信頼関係を構築する力、複雑な内容を分かりやすく説明するコミュニケーション能力が重要です。

・一定以上の語学力と海外専門家や金融機関との連携力

各国の税理士、会計士、弁護士などの専門家との連携や、金融機関への問い合わせ対応が発生することがあります。

そのため、海外の専門家と必要な情報を正確にやり取りできる程度の語学力や、複数の関係者をまとめる調整力が求められます。

まとめ

ここまで、国際税務の主な業務内容と、それぞれの領域で求められるスキルについて解説してきました。

AIの発展により、翻訳や英文資料の下訳、情報整理などはテクノロジーによるサポートを受けやすくなっています。そのため、語学面で国際税務に挑戦するハードルは、今後少しずつ下がっていく可能性があります。

一方で、税制を正しく理解し、個別の状況に当てはめて判断する専門性や、クライアントの要望を把握し、国内外の関係者を調整する力の重要性は、今後も変わりません。

語学面ではテクノロジーのサポートを活用しつつ、国際税務に関する専門知識を身につけることで、希少性の高いキャリアを築くことができます。また、税務知識と判断力、コミュニケーション能力を組み合わせた仕事は、AIにも代替されにくい領域といえます。

同じBig4であっても、海外拠点との連携体制や、得意とする国・業種・業務領域には違いがあります。そのため、ご自身が興味を持っている領域で良いキャリアを築くためには、どの法人やチームに所属するのかという点も重要です。

専門性が高い領域であるからこそ、国際税務や各法人の特徴を理解している転職エージェントの支援が効果的な分野でもあります。

国際税務領域への転職にご興味をお持ちの方は、ぜひ弊社コンサルタントまでご相談ください。

※本記事は、国際税務に関する一般的な業務内容や転職市場の傾向を紹介することを目的としたものであり、個別の税務判断や税務アドバイスを行うものではありません。実際の税務上の取扱いについては、税理士その他の専門家へご相談ください。


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